2023年の自由民主党系列政治団体清和政策研究所を中心とするいわゆる裏金問題が教えてくれたこと、それは次の2点に集約できる。
- 政治資金規正法は厳しい罰則があるにもかかわらずグレーゾーンが多く行政(検察)も政治家も運用においては自分たちの都合がいいようにやりやすい(恣意性の入る余地が大きい)
- 裏金は政治に金がかかる問題を改めて浮かび上がらせた。国会議員になるにも、維持するにも、中小企業の社長並みに人件費、光熱費、地代家賃がかかりすぎる
そもそも政治資金規正法では、企業や団体が、政治家(の後援会)に直接寄附をできない仕組みになっている。理由は単純で、人の命や国家の安寧が、一私企業や個人の都合で左右されていいわけがないからだ。国、ひいては公は、一個人や私企業の持ち物ではなく、みんなのものだからだ。金を持っているからといって、国家の運営に株主よろしく口を出せるようなことがあったら、金を持っていない人たちの不利益につながらないわけがない。
政治は宗教と同じで、知性ではなく感情の現象である。
そして人は、孤独ではいられない。孤独でいるとエンドルフィンという脳内物質が枯渇し、幸福感を得られなくなってしまう。
地域政党はこのエンドルフィンという物質を分泌する時間と場所つまり機会を、創出し続けることが重要だろう。政治家の集まりなのに何でそんなケアみたいなことを?と思うかもしれないが、あいにくそれ以外はやるセクターがもうとっくに整備されている(企業、立法、司法、行政はもとより、あらゆる福祉マインドあふれる市井の市民やボランティア組織、NPOのこと)。
政治家でさえ、もうとっくに、その本職である「立法」を官僚に渡してきてしまった。もう複雑化したいまの法体系で、新しい何かを作り出す知性は残っているんだろうか?少なくとも、いまの国会の様相を見る限り、絶望的だろう。
官僚の本質はオタクであり、オタクはたいていの場合、グラデーションでやや極端な分布の側に位置する精神神経的な領域の住民であるだろう。したがって、彼らの関心事は、公というよりも、年二回のイベントや、ゲームやアニメなどのファンタジーに注がれている。残業もしたくないし、仕事はさっさと終わらせたい。競争に脱落すれば、天下りでいよいよたくさんの時間ができるから最高だ。
話を戻すが、政党だからといって、つまり、中学の公民で習うような内容の仕事や職責を果たすのがそのミッションだと思うのは間違いだ。
地域で孤立してしまっている、何かを期待して、党費を払ってくれている党員に、次の旅行や飲み会、ランチ会のお誘いを出すのがものすごい大事だと思う。
その際に、興味関心が著しく細分化し、飲み会や旅行に対して、昭和の社員旅行や会社の飲み会のようなイメージを持っている(そしてそれは正しい)若い人たちのために、地域政党は旅行代理店のような役割を果たすのに徹するべきだろう。見ず知らずの他人が初めましてのコミュニケーションからはじめて、旅行や飲み会に参加するのは今時ハードルが高い。
私がネットワーク理論の本を何冊か読んでの結論だが、人間の自然のな関係は、せいぜい3人だということである。これは、エンドルフィンを創出する活動を、ストレスなく享受するためにも好適なユニットといえる。
したがって本論の結論としては、2人または3人単位で、総支部が金を出して、党員たちが、食事会、飲み会、旅行に行く企画を多頻回で企画実施していくのがこれからの政党支部の活動として正しい。
政治家は売名行為できないので、その会に参加したり、何らかの名前を覚えてもらえるような仕掛け(挨拶するとか)は公選法の地雷を踏むリスクになるからやめていただかざるを得ない。
また、選挙買収はもとより違法なので、もしかしたら、政党支部が有権者にこうしたサービス給付を行うのはまずいと思う人がいるかもしれないが間違いだ。確かに、政治資金規正法では公職の候補者もしくは現に公職にあるものが金を配ったらその形態を問わず違法だが、但し書きがある。「政党支部を除く」というのが。
会計責任者が、帳簿に、そのお金の入りと出を逐次記帳することだけが規定されている。
参考文献
「複雑ネットワーク」とは何か 複雑な関係を読み解く新しいアプローチ (ブルーバックス) Kindle版
増田直紀 (著), 今野紀雄 (著)
私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書) 新書 – 2007/4/25
増田 直紀 (著)
宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか
ロビン・ダンバー
公職選挙法、政治資金規正法